バッカスの誕生
ある時、ゼウスは人間のセメレという娘を愛人にし、妊娠させました。
この事に気づいたヘラは烈火のごとく怒ります。
そして、ヘラはセメレの乳母にばけて、セメレの元に行きセメレにこう言ったのです。
「ゼウス様だと言って貴方のもとに通ってくる男の方は本当にゼウス様なのでしょうか?貴方が騙されているかもしれないと思うと私は心配でなりません。私は本当にゼウス様であるか確かめた方が良いと思うのです」
信頼している乳母の言うことですからセメレは彼女の言っていることを信じこみます。
乳母の姿をしたヘラはこう続けます。
「神のお姿を見せてくださいとお願いしたらどうでしょう。本当のゼウス様ならお見せ下さるはず。しかし、神が人の前で神の姿は取れないというかもしれません。ですから、はじめにステュクスに一つ願い事を叶えることを誓っていただいて、けして言い逃れが出来ないようにしておくのです」
セメレはゼウスが来たとき、この事を実行しました。
ゼウスは愛しいへメレにヘラがこう吹き込んだことがわかりましたが、ステュクスの水に誓ったことは神々でも違えることが出来ません。
ゼウスはセメレの前で神の姿になりました。
セメレは神の姿にもどったゼウスの発する灼熱にたえることが出来ず、一瞬で焼け死んでしまいました。
しかし、セメレのお腹のなかの子供は無事だったので、ゼウスが取りだし、自らの太ももに傷口をあけ、縫い込んだのです。
この子供こそがバッカスです。
そして、ゼウスは時期がくると太ももからバッカスを取りだして、セメレの姉夫婦にバッカスを育てるようにいいます。
しかし、それを知ったヘラがセメレの姉夫婦を狂わし、殺してしまいます。
バッカスはこのあと、ゼウスによって遠いニュサの山のニンフたちに預けられ育てられました。
やがて、成長すると、バッカスはぶどうの栽培方法と葡萄酒の作り方を開発し、お酒の神さまとなりました。